クレイン日記


図書出版クレイン の日々の記録
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# by cranebook | 2016-01-15 16:51 | 雑感

「戦後日本語文学と金石範」シンポジウム

11月8日(日曜日)に現内閣総理大臣の出身大学である成蹊大学に行ってきました。在日朝鮮人作家・金石範氏の済州島四・三事件を描いた大作『火山島』の復刊記念シンポジウム「戦後日本文学と金石範」に参加するためです。当日はクレインの本の販売もさせていただきました。なにしろ成蹊大学といったら、事務所と同じ吉祥寺にあるのですから、行かないわけにはまいりません。
それに、この成蹊大学というところで、冷戦の最たる悲劇を描いた超大作の著者と著作を囲むシンポジウムが開かれるというのですから、痛快じゃないですか。

さて、当日のシンポジウムは、300人を超える参加者で盛況でした。また、懐かしい顔ぶれ、思いがけない方々ともお会いしました。ええ、なんでここにあなたがいるの、という感じで驚きました。金石範文学の読者だったなら、もっと早く言ってくれていればよかったのに、と少し残念な気もしましたが、当日にお会いして、そのことを知っただけでもよしとしましょう。

それにしても今年90歳を迎える金石範氏のお元気なこと。シンポジウム最後のご本人のご挨拶を書籍販売コーナーから写してみました。
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あと、『火山島』は日本で復刊(オンデマンド)されただけでなく、タイミング良く韓国語版が刊行されました。この大作が日韓両国の人たちに読まれることを期待しています。

本当のところ、日本での復刊がオンデマンド版であることは残念です。
オンデマンドは注文生産印刷なのですが、やはり1000部でよいので、あらかじめ印刷して、少しでよいので店頭に並べてほしかったと思います。そうしたことも困難にする、日韓・日朝・在日を取り巻く現況ということでもあるでしょう。それがなににもまして残念なことです。
クレインにその能力があればなあ、『火山島』といわず、そのほかにも現在読まれてよい在日作家の手になる小説はあまたあるのですが……。

それにしても函入りの文藝春秋版を初めて読んだのは、もう、かれこれ35年ほど前のことになるんですね。どうりで私も歳を取りました。

主催された実行委員会のみなさま、どうもお疲れさまでした。
また、場所を提供された成蹊大学、なかでもアジア太平洋研究センターのみなさま、感謝申し上げます。
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# by cranebook | 2015-11-09 12:13 | 雑感

10月に入りました。

 はやいもので、もう10月です。
 第1回日本翻訳大賞の授賞式から、すでに半年が経過しました。
 それを記念して弊社のツイッター・フェイスブックの絵柄は受賞作「カステラ」になっていますが、まだそのままにしておきます。今年中はそのままだと思っておいてください。それに代わるすごい出来事が起これば別ですが(フフフ)。

 さて、次回の翻訳書はなにを用意しているのかと、よく聞かれますが、特に用意はしておりません。なにしろ、一冊刊行するだけでたいへんですから、ましてや翻訳書ともなると、まとめるのに時間がかかります。良書との出会いを期待してしばらくおとなしくしておきます。いずれ向こうからやってくるでしょう。

 あとは、増刷情報です。アサーション関係のロングセラー『それでも話し始めよう』(アン・ディクソン著)の4刷が今月の半ばにできあがります。
 この世に生きるためには、なんだかんだといっても円滑な人間関係が必要です。
 円滑な人間関係と、良好な対人関係をつくる上でのちょっとした参考としてぜひお読みいただければ幸いです。

 では、今月もよろしくお願いいたします。
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# by cranebook | 2015-10-05 11:21 | 雑感

参議院特別委員会での強行採決を見る

 2015年9月17日、強行採決をネットで見る。
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# by cranebook | 2015-09-17 16:45 | 雑感

金鶴泳の墓所に参りました。

 9月15日火曜日に、金鶴泳の出身地にある高崎市新町の彼の眠る専福寺に参ってきました。
 今年2015年は彼の没後30年になりますので、5年ぶりになりますが行ってきました。
 と同時に、今年は佐藤泰志の没後25年にあたります。佐藤泰志のほうは、小説「オーバーフェンス」が第三弾として映画化されることもあり、さまざまにイベントが彼の出身地・函館を中心に行なわれます。

 私にとっては、佐藤泰志も金鶴泳も大切な作家。一方の作家が没後25年ということでスポットライトを浴びているのに、もう一方の没後30年の作家を無視することができるはずがないじゃないですか

 ということで参ってきました。もちろん一人でです。平日の昼間に出発したのですが、湘南新宿ラインの高崎行きにうまくアクセスできず、途中までの湘南新宿ラインと高崎線を乗り継ぎ、行きは2時間30分かかりました。5年前はそうでもなかったのですが、今回は疲れました。50代半ば近くともなると、さすがに、きついきつい。

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 さて、3時頃に高崎線の新町駅に到着。さっそく専福寺に向かいました。駅から徒歩で10分ほどです。
 歩いているうちに、懐かしい風景に出くわします。県道178号線を歩いて行ったのですが、この沿線は、いまは寂れていますが、かつては、にぎわっていたであろう、商店街の面影を、ところどころに見受けることができます。
 
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 県道沿線の洋装店です。金鶴泳の小説に、実家が洋装店を営む女性に好意を寄せつつも、自分が朝鮮人であり、また彼女もそのことを知っていることで、二人のあいだになんとなく距離感が生まれていて、積極的にアプローチできないことに悩む青年を描いた作品がありますが、その小説のことを思い出しながら、シャッターを切っておりました。ひょっとして、この店がそうなんじゃない……。

 
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 ほどなくして専福寺に着きました。この門をくぐると墓所へと続きます。その墓所の最奥あたりに金鶴泳の眠る場所があります。ひときわ目立つ、金家先祖代々のお墓です。
 
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 途中のマーケットで購入した献花を供え、地酒「谷川岳」で献杯です。
 そして、いくつかの報告をさせていただきました。午後二人だけの時間。それにしても「谷川岳」はおいしかった。
 こんなことも、小旅行の楽しみですね。そうです。もう、このときには、小旅行気分でした。金さん、ゴメンなさい。なにしろ帰りには同じく地酒「高崎」まで購入したのですが、これまたうまかったー。近頃、日本酒にはまっているもので、ついつい……。
 
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 その後、専福寺に隣接する諏訪神社の境内をぶらつきました。
 この境内は、金鶴泳の小説によく登場します。放課後の遊び場として、お祭りの練習場として、失恋の悲しみに暮れる場所として……。なかでも、つぎのような場面を忘れることはできません。それはこんな場面です。

 主人公の少年は、暴力的な父がいる暗い雰囲気漂う自宅が大嫌いです。放課後に境内で友だちと遊んでいても、夕刻になり、辺りが暮れなずむと、またあの家に帰らなければならないのかと、とても暗い気持ちになります。その一方、彼と遊んでいる友だちたちは、夕餉の待つ自宅へ嬉々として帰っていきます。彼らのそんな表情を主人公の少年はうかがうにつけ、うらやましくてうらやましくて仕方がありません。自分は、少しでも帰宅時間を延ばしたいのに、彼らは、うれしそうに帰っていく。そこに、彼らの家庭の暖かみを感じ、それとは反対の自らの家庭の暗さを確認する少年の哀しみが、象徴的に表現されています。
 こうした描写に私は、読者として胸打たれました。そのことが、私が金鶴泳の愛読者になったいちばんの理由です。
 なにしろ、私の生まれ育った家庭も父の暴力を伴う、とても暗いものでしたから、その少年の心情がわかりすぎるぐらいわかるんですね。遊び場に最後に一人残されて、帰宅するときの、それはそれはさみしくも哀しい心の中を。
 
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 そして、主人公の少年は、この諏訪神社の参道を力なく帰っていきます。
 この参道もこうして見てみると、みじかい小さな参道ですが、金鶴泳の小説に登場する少年の目からすれば、なんと、大きくて重たい存在であったことでしょう。
 私もゆっくりこの参道を通ってみました。

 こうして、金鶴泳の墓所に参った一日が終わりました。
 ひさしぶりに思いに残る時間になりました。

 金さん、 ゆっくりお眠りください。
 また、いずれ来させていただきます。
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# by cranebook | 2015-09-17 15:50 | 刊行物関連