クレイン日記


図書出版クレイン の日々の記録
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by cranebook | 2017-07-25 15:12 | 雑感

【『対話のために』「帝国の慰安婦」との問いをひらく】公開書評会が開かれました。

7月21日の金曜日に早稲田大学において、【対話のために「帝国の慰安婦」という問いをひらく】の公開書評会がひらかれました。韓国から『帝国の慰安婦』の著者・朴裕河さんもゲスト参加され、執筆者を含め70名ほどの参加者がありました。

早稲田大学で開催されたのは、本書『対話のために』の編者のお一人である浅野豊美さんが教鞭を執られていることもありますが、同氏は今後、【和解の創成】をテーマに研究をされていく予定であることも、今回の開催につながったようです。

会は和田春樹さんと紅野謙介さんからの、「慰安婦問題」と本書に対する短評からはじまりました。和田さんからは、「アジア女性基金」で要職をつとめられたご本人の体験談を中心に、この間の「慰安婦問題」の流れが話されました。朴裕河さんの『帝国の慰安婦』が政府関係者に一定の影響を与えたであろう、という言葉には若干の驚きがありました。
また、紅野謙介さんは、文学研究と歴史実証主義のせめぎ合いの問題が文学研究者としてのご自身のポジションからお話しされました。文学研究は実証主義史学にどう影響を与えるのか、いや、与えられるのか。そもそも文学表現は歴史たり得るのか(小説は歴史的事実なのか)という設問だと思います。紅野さんのご意見では、文学の自省を強く求められているようでしたが、これには異論もあることでしょう。事実、朴さんや、著者の中川成美さんからは、時約款の違和感が表明されました。
さらに、紅野さんからは、「慰安婦問題」の進展具合と「水俣病」の認識過程とを対比した議論も提起されました。あらためて考えてみるべきテーマだと思います。

著者としては、西成彦(兼・編者)・外村大・中山大将・上野千鶴子・熊谷奈緒子・熊木勉・四方田犬彦・中川成美の各氏にお越しいただきました。
西さんからは、『帝国の慰安婦』批判ばかりが横行する中で、その状況を是正したいという思いから、この論集『対話のために』を編んだことが語られました。外村さんからは、文学研究をどのように取り入れるのかという歴史研究者への問いかけを本書を通してしたいのだということ。中山さんからは、「慰安婦問題」についての場外乱闘をもうやめようではないかということ。上野さんからは、生存者のエイジェンシー(主体)は時と場所の違いにより、ゆれ動くものであり、フォーマットなき「語り」の可能性を追求していきながら、「慰安婦問題」から/の外に展開していきたいとの希望が語られました。熊谷さんからは、「強制性」ということを共通のテーマにして、戦争被害者の問題を考えていきたいということ。熊木さんからは、「慰安婦問題」を暴力性の観点だけからではなく、個々の「慰安婦」の抱えたであろう「恥ずかしさ」ということも念頭において、本書を執筆したということでした。また、熊木さんからは、「慰安婦」を扱った同時代の文学作品が思いのほか少ないとの発言がありました。私個人の思いとしては、熊木さんのテーマがとても興味深いものでしたので、もっと多くの同時代の「慰安婦」に関する文学作品を紹介してほしいと思っていたものですから、少しばかり残念でした。四方田さんからは、日本映画の中では、戦後すぐから「慰安婦」をテーマにした作品を作ろうと奔走した映画監督・黒沢明・吉村公三郎などの話が紹介されました。また「慰安婦問題」と「拉致問題」をクロスして考える必要について訴えられました。そのほか「少女像」の将来に対すて日本の「お地蔵様」に比したお話しは、一笑にはふせない説得力がありはました。中川さんからは、小説家の田村泰次郎の作品を例に、文学は「虚構」ではあるが、けっして「噓」ではないと語られ、そのことを歴史的史実と文学作品を混同することの危惧についての反論とされていました。
そして、ゲストの朴裕河さんからは、『帝国の慰安婦』が訴訟沙汰になった理由について話され、それはけっして本の中身のことだけが理由ではないということの説明がされました。では、その理由はなにか。朴さんによれば、それは「慰安婦問題」の解決のための日本の「法的責任」を認めていないからだとのことでした。そして『帝国の慰安婦』が日本の読者に受け入れられたことを、なぜ否定されなければならないのか、受け入れられる本であってよかったと言われました。朴さんのお話しからは、これまで知られていないことが多々あり、参加者にも貴重な時間となったのではないでしょうか。

以上、書評会の報告をさせていただきます。当日お越しいただきました皆さま、どうもありがとうございました。
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by cranebook | 2017-07-25 15:11 | 刊行物関連