クレイン日記


図書出版クレイン の日々の記録
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by cranebook | 2016-08-23 17:30 | 刊行物関連

金鶴泳の墓所に参りました。

 9月15日火曜日に、金鶴泳の出身地にある高崎市新町の彼の眠る専福寺に参ってきました。
 今年2015年は彼の没後30年になりますので、5年ぶりになりますが行ってきました。
 と同時に、今年は佐藤泰志の没後25年にあたります。佐藤泰志のほうは、小説「オーバーフェンス」が第三弾として映画化されることもあり、さまざまにイベントが彼の出身地・函館を中心に行なわれます。

 私にとっては、佐藤泰志も金鶴泳も大切な作家。一方の作家が没後25年ということでスポットライトを浴びているのに、もう一方の没後30年の作家を無視することができるはずがないじゃないですか

 ということで参ってきました。もちろん一人でです。平日の昼間に出発したのですが、湘南新宿ラインの高崎行きにうまくアクセスできず、途中までの湘南新宿ラインと高崎線を乗り継ぎ、行きは2時間30分かかりました。5年前はそうでもなかったのですが、今回は疲れました。50代半ば近くともなると、さすがに、きついきつい。

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 さて、3時頃に高崎線の新町駅に到着。さっそく専福寺に向かいました。駅から徒歩で10分ほどです。
 歩いているうちに、懐かしい風景に出くわします。県道178号線を歩いて行ったのですが、この沿線は、いまは寂れていますが、かつては、にぎわっていたであろう、商店街の面影を、ところどころに見受けることができます。
 
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 県道沿線の洋装店です。金鶴泳の小説に、実家が洋装店を営む女性に好意を寄せつつも、自分が朝鮮人であり、また彼女もそのことを知っていることで、二人のあいだになんとなく距離感が生まれていて、積極的にアプローチできないことに悩む青年を描いた作品がありますが、その小説のことを思い出しながら、シャッターを切っておりました。ひょっとして、この店がそうなんじゃない……。

 
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 ほどなくして専福寺に着きました。この門をくぐると墓所へと続きます。その墓所の最奥あたりに金鶴泳の眠る場所があります。ひときわ目立つ、金家先祖代々のお墓です。
 
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 途中のマーケットで購入した献花を供え、地酒「谷川岳」で献杯です。
 そして、いくつかの報告をさせていただきました。午後二人だけの時間。それにしても「谷川岳」はおいしかった。
 こんなことも、小旅行の楽しみですね。そうです。もう、このときには、小旅行気分でした。金さん、ゴメンなさい。なにしろ帰りには同じく地酒「高崎」まで購入したのですが、これまたうまかったー。近頃、日本酒にはまっているもので、ついつい……。
 
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 その後、専福寺に隣接する諏訪神社の境内をぶらつきました。
 この境内は、金鶴泳の小説によく登場します。放課後の遊び場として、お祭りの練習場として、失恋の悲しみに暮れる場所として……。なかでも、つぎのような場面を忘れることはできません。それはこんな場面です。

 主人公の少年は、暴力的な父がいる暗い雰囲気漂う自宅が大嫌いです。放課後に境内で友だちと遊んでいても、夕刻になり、辺りが暮れなずむと、またあの家に帰らなければならないのかと、とても暗い気持ちになります。その一方、彼と遊んでいる友だちたちは、夕餉の待つ自宅へ嬉々として帰っていきます。彼らのそんな表情を主人公の少年はうかがうにつけ、うらやましくてうらやましくて仕方がありません。自分は、少しでも帰宅時間を延ばしたいのに、彼らは、うれしそうに帰っていく。そこに、彼らの家庭の暖かみを感じ、それとは反対の自らの家庭の暗さを確認する少年の哀しみが、象徴的に表現されています。
 こうした描写に私は、読者として胸打たれました。そのことが、私が金鶴泳の愛読者になったいちばんの理由です。
 なにしろ、私の生まれ育った家庭も父の暴力を伴う、とても暗いものでしたから、その少年の心情がわかりすぎるぐらいわかるんですね。遊び場に最後に一人残されて、帰宅するときの、それはそれはさみしくも哀しい心の中を。
 
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 そして、主人公の少年は、この諏訪神社の参道を力なく帰っていきます。
 この参道もこうして見てみると、みじかい小さな参道ですが、金鶴泳の小説に登場する少年の目からすれば、なんと、大きくて重たい存在であったことでしょう。
 私もゆっくりこの参道を通ってみました。

 こうして、金鶴泳の墓所に参った一日が終わりました。
 ひさしぶりに思いに残る時間になりました。

 金さん、 ゆっくりお眠りください。
 また、いずれ来させていただきます。
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by cranebook | 2015-09-17 15:50 | 刊行物関連

金鶴泳没後30年

 今年は、金鶴泳の没後30年です。
 クレインで金鶴泳作品集のⅠ『凍える口 金鶴泳作品集』を刊行してから11年、Ⅱの『土の悲しみ 金鶴泳作品集Ⅱ』を刊行してから9年、あっという間の歳月でした。この間の2008年には、生まれ故郷・群馬の土屋文明記念文学館での生誕70年記念展示会などのイベントが行われてきました。
 
 なにか、それでもって一段落したような感じで、以降、取り立てて金鶴泳に関しての集まりなどはありません。というか、私から、呼びかけてもいないので、仕方のないことでもありますが。

 だからというわけではありませんが、没後30年の今年は、久しぶりに、金鶴泳が眠る高崎市新町の専福寺に行ってこようと思っています。金鶴泳の誕生日の9月14日あたりを予定しています。

 また今年は、佐藤泰志没後25年でもあり、彼・佐藤泰志に関しては、映画化第三弾に伴い、様々なイベントが企画されています。

 私にとって、同時に大切な作家・金鶴泳と佐藤泰志。
 金鶴泳のことを忘れるわけにはいきません。
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by cranebook | 2015-08-26 12:13 | 刊行物関連

『カステラ』が「第1回 日本翻訳大賞」を受賞しました。

昨日、4月13日に『カステラ』の「第1回 日本翻訳大賞」の発表がありました。
あらためまして、応援いただいておりました皆さま、どうもありがとうござました。また、選考委員の皆さま、そして翻訳者のヒョン・ジェフンさん・斎藤真理子さん、どうもご苦労さまでした。

もうすでに、HPなどで同じことを書いておりますので、くどくどと申し上げませんが、発表の四、五日前になりますか、一人で吉祥寺の「井の頭公園」に行ってきました。スワンボートを撮影するためにです。

『カステラ』に収められている「あーんしてみて、ペリカンさん」という短編があるのですが、そこにスワンボートに乗って世界中の現場を飛び回る労働者の話しが出てくるんです。

そして、突然、思いつき、デジタルカメラを持って、小雨の中、「井の頭公園」のスワンボート乗り場に向ったというわけです。

なにかしら、そうせずには気持ちが落ち着かなかったということなんでしょう。
その時の私の心模様が、そんな行動にあらわれていたようです。

そのときの写真をツイッターに載せてありますので、探してみてください。
「スワンボート世界市民連合」の人たちがやって来ました。この後どこに行く予定ですか」
と記している4月9日のツイートです。

こんなことも、今回の受賞にまつわる思い出の一つです。
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by cranebook | 2015-04-14 13:18 | 刊行物関連

『カステラ』が「第1回 日本翻訳大賞」の最終選考候補作に選ばれました。

パク・ミンギュの『カステラ』が、「第1回 日本翻訳大賞」の最終選考候補作に選ばれました。
本書の最初の購読者で(なんと事務所まで買いに来ていただきました)、「韓国語 book cafe」を主催されている翻訳者の吉良佳奈江さんに、本日、4月3日、教えていただきました。

前回の日記では、読書感想会のことを紹介いたしましたが、この本『カステラ』をおもしろいと言ってくださる方々の存在があってこそ、最終選考候補にまで上り詰めたのだと思います。

みなさん、どうもありがとうございます。この場をお借りして御礼申し上げます。

さて、大賞の決定は4月12日、発表は13日とのことです。楽しみに結果を待っています。
またなにより、去年から立ち上げられた初の試みである、この「翻訳大賞」を、主催され、ご支援されてきた方々に御礼を申し上げないといけません。

なぜなら、『カステラ』の存在をしっかりと受け止めていただいたのですから。

そして、言うまでもなく、ヒョン・ジェフンさんと斎藤真理子さんお二人の訳者に感謝です。
懸命に日本語の翻訳に取り組んでいただきました。いろんな注文にも応えていただきました。
あらためて御礼申し上げます。

最後になりますが、結果はどうあれ、最終選考候補作の中に韓国と中国の現代小説が一冊ずつ入っていることをたいへんうれしく思います。今回のことをきっかけにして、東アジアの文学がこれからもっともっと読まれることを期待するばかりです。
そのことに尽力できるならば、私にとっては賞よりも意味のあることです。

そしてそのことが、現在の東アジア情勢をより良い方向に進める、ほんの小さなものであれ、しっかりとした歩みになれば、それ以上なにも言うことはありません。
「文学よ、どうか政治を救っておくれ」。

いささかの興奮とともに記します。

I just believe in me.
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by cranebook | 2015-04-03 18:09 | 刊行物関連

『カステラ』の読書感想会に参加しました。

2月23日(月)の夜に西荻窪の「beco cafe」で行われた『カステラ』の読書感想会に参加しました。翻訳者の斎藤真理子さんにも同行をお願いしました。

主催は「立川読書倶楽部」です。当倶楽部のメンバーは、書店、出版社にお勤めの方や翻訳者、また大学院生などで構成されており、読書課題として設定した海外文学作品の感想会を数ヶ月に一度開催されています。

今回、その課題図書としてパク・ミンギュの『カステラ』が選ばれましたので、発行元を代表して、私も参加させていただいたということです。

当夜は、私たちを含め11名の参加者で、それぞれが感想を自由に話し合いました。
いやー、それにしても楽しい会でした。村上春樹、高橋源一郎、車谷長吉、カート・ヴォネガットなどの文学作品との類似性などにも話しが及び、私からすると、ええ、そんなたいそうな、という感じでしたが、小説は誰がどう読もうと自由、自由。まったく自由だ。

それに、参加いただいた方々の年代は、20代から30代とお見受けでき、光州事件や韓国の民主化運動などの激動の韓国現代史をタイムリーにはご存じない方々で、その世代の方々から、「おもしろかった」「はげまされた」「読後になにかしら印象に残る」といった言葉をいただきました。

そのことが、ほんとうにうれしかった。現代史のことについて触れたのは、短編作品集である『カステラ』のいくつかの作品には、その要素が色濃く反映されているからです。それが作品への楽しみを少しばかり削ぐ要素になるのではないかと、発行者として危惧していたからです。

そんな心配はご無用でした。もっと文学の力を信じないといけません。反省。

また最後には、『カステラ』はもっともっと評判になってよい作品だという声をみなさんからいただきました。
つまり、私の営業努力が足りないということです。これまた反省。

さて、立川読書倶楽部のみなさん、昨夜は、楽しみから反省点まで与えていただき、どうもありがとうございました。またいつの日か課題図書にしてもらえるような小説の刊行を目指しますので、その折はよろしくお願いいたします。

ただ、そのまえに、『カステラ』の販売をがんばらないといけません。
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by cranebook | 2015-02-24 13:42 | 刊行物関連

在日朝鮮人とハンセン病

 先日、東京都東村山市にある「ハンセン病資料館」に行ってきました。隣接する「多摩全生園」の患者さんとの交流も含め、たいへん貴重なそして楽しいひとときでした。
資料館に行った直接の目的は、当館学芸員の金貴粉さんに、「在日朝鮮人とハンセン病」のタイトルで執筆をお願いするためでした。足早でしたが、彼女に解説をしてもらいながら、館内を巡りました。そこでは、強制隔離や断種手術に象徴される、患者たちへの差別の実態が展示品と証言記録などから明らかにされています。と同時に、楽団の結成などの文化行事も患者さん自らの力でおこなわれてもいて、絶望のなかにあっても、楽しみを見つけて生きていこうとする彼ら彼女らの魂を垣間見ることができました。
ぜひ、みなさんも機会があれば訪れてみてください。
 
 さて、では、ハンセン病史における在日朝鮮人についてですが、日本にある療養所では、朝鮮人の患者はかなりの人数におよびました。その原因は生活環境の劣悪さにあります。日本の炭坑や工事現場での労働に従事していたことがその理由です。そして、彼ら彼女らは朝鮮人であることをもって日本人の患者とは待遇面において明らかな差別がありました。また民族的偏見によって犯罪予備軍の扱いも受けてきています。
 しかし、そのような歴史が語られる機会はほとんどありませんでした。日本人、朝鮮人にかかわらず、高齢化の進行はハンセン病の患者の世界でも当然のことです。それゆえ、その歴史を語り残すことが急務でもあります。

 そんな思いで、本書の刊行を考えました。ぜひ、実現に向けて頑張りますので、刊行いたしましたら、どうかお読み下さい。

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by cranebook | 2014-06-02 17:09 | 刊行物関連

パク・ミンギュ『カステラ』刊行間近

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ようやく、パク・ミンギュ『カステラ』の刊行が間近になりました。今月の刊行予定です。
ほんとうにここまで長かったです。出版を決めて、どうでしょうか、2年は経っていると思います。
版権の取得から翻訳原稿の確認に至るまでには、多くの方々の協力を得て進めてきました。
韓国在住の友人、韓国現代小説の翻訳者、韓国文化庁の外郭団体の人たち、など、数え上げれば、両手が必要になります。

さて、本作ですが、韓国では2005年に初版、その後、現在まで版を重ねているロングセラー作品です。10編の短編が収められており、どれもが、現代韓国が抱えている問題を、優しさ溢れる人間への讃歌をベースにして、取り上げています。その問題とは、この資本主義社会がもたらした格差・貧困・競争といったテーマです。そしてそれは、ここ日本においても共通する、現在を彩るテーマであるでしょう。

どれだけの反応をいただけるか、正直なところわかりませんが、たいへん私自身が楽しみにしております。
なぜなら、私自身が、韓国文学を発見したといってもよいほどの衝撃を受けたのですから。
どうか、みなさん、ぜひご購入ください。

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by cranebook | 2014-03-07 13:14 | 刊行物関連

新刊までもう少しです

 2月もはや半ばを迎えようとしています。
 もう少しで新刊の詳細をみなさんにお知らせできると思いますので、もうしばらくお待ちください。

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by cranebook | 2014-02-12 12:45 | 刊行物関連

脚本家・水木洋子展

 先週の2月6日(木)に、千葉県市川市の「市川市文学ミュージアム」で開催されている「水木洋子展」に行ってきました。
 脚本家・水木洋子(1910~2003)は今井正の映画で多くの脚本を執筆しています。代表作に「また逢う日まで」「キクとイサム」「あれが港の灯だ」などがあります。
 私は、『今井正 戦時と戦後のあいだ』の刊行過程で観た今井正の映画を通して、水木洋子のことを知りました。とくに「あれが港の灯だ」(1961)を通してです。なにしろ、その映画での、在日朝鮮人青年の心理描写が見事というほかなかったものですから、映画を観てすぐに脚本家に目がいきました。
 そのことを契機にして『脚本家 水木洋子』(加藤聲著、映人社、2010年)などを読み、水木への興味を抱いていたところ、市川市文学ミュージアムでの展覧会を知り、先日、鑑賞に行ってきたというわけです。
 展覧会は、水木洋子の取材メモや、シナリオの下書き・映画ポスターなどが展示され、脚本家・水木洋子の全体像をコンパクトに知ることができる、たいへんに力のこもったものでした。
 
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 また、常設展示では、水木洋子の生涯が年表風にまとめられ、それぞれの時期の活動の模様が液晶画面で見れるようになっています。
 
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 さて、市川市と水木洋子との縁ですが、戦後に疎開先として市川にやってきたようです。1947(昭和22)年から亡くなるまで住んでいたようで、その居宅についても、公開日は決まっていますが、一般公開をされているので、これもまた興味をそそられます。

 最後になりますが、展示会場の「市川市文学ミュージアム」は昨年に開館されたばかりの建物で、水木洋子など市川市ゆかりの文学者の資料が揃えられています。水木については、映画公開時の新聞評や雑誌紹介などの貴重な資料が用意されていますので、ぜひ、みなさん足を運んでみてください。3月2日(日)まで開催されています。

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by cranebook | 2014-02-12 12:40 | 刊行物関連